【コラム】冗長性を考える。(その3:実装例前半)

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ずいぶんと長いコラムとなっておりますが、「冗長性を考える」の第三弾。最終章になります。ここまでの話をざっくりまとめると・・・
冗長性とは

・些細な失敗や事故で脱落者が発生しない。
・ゲーム中にたくさんの「小さな成功・達成」を味わうことができる。


であり、やはりこれはゲームとしての理想像の1つです。
一方で『ゲームの結果に大きく反映されないような「小さな成功」は通過点として認識され、成功感・達成感が得られない可能性がある。』
という、根幹的な問題を内包しています。つまり、冗長性をゲームに持たせること、実装していくことは、そうそう一筋縄ではいかないということです。
しかし、世の中には上記を満たすようなゲームがあることを我々は経験していていたりもします。

今回は、実際にどんな方法で冗長性は実装されているのかを見てみましょう。

【コラム】冗長性を考える。(その1:冗長性って何?)
【コラム】冗長性を考える。(その2:小さな成功)


1.「比較」を意識させない方法

対戦ゲームの成功は相対的に評価・認識される。これは前回書かせて頂いたことですが、ならば、その逆を攻めていくのは王道中の王道です。ゲーム中の自分のアクションや場を他のプレイヤーと比較することができなければ、あるいはしにくければ、絶対的な観点から成功感を得られるはずです。また序盤に小さな失敗をしていたとしても、それによって脱落したという感覚を排除することができるでしょう。(仮に相当不利な状況に陥ってたとしても、それをわかりにくくしてくれるのです。)
俗に箱庭といわれる自分の場を構築していくタイプの拡大再生産がこれに当てはまります。自分の盤面に建物が順次建っていく、自分の前に特殊なカードが並んでいく。これは他のプレイヤーに関係なく、それなりに嬉しいものです。ソロゲーではありませんが、この手のゲームでは終了時まで、他のプレイヤーとの差を突きつけられる機会がないのも特徴といえるでしょう。
(反例として最近プレイした「ロシアンレイルロード」を挙げておくと、このゲームでは各ラウンド終了時に各々の盤面に応じた得点が入ります。ここで、太郎君が30点、次郎君が40点、といったように、ラウンドごとに他のプレイヤーとの差異が確認できてしまうため、「小さく成功している」認識は薄くなるように感じます。冷静なプレイが求められるゲームですね。)

また、ゲームの勝利という目標に向かって、多様な手段・戦術がとれることも、他のプレイヤーとの具体的な進展差を意識させにくくする手法で、この手のゲームには多く織り込まれてきます。いくら、自分の盤面に集中したとしても、戦術がワンパターンしかとれないようでは、他のプレイヤーと比較して、自分が遅れている、進んでいるが明白にわかってしまうことは言うまでもないでしょう。逆に多様な戦術が取れれば、極論、プレイヤー全員が違う手段を用いて勝利を目指しているとすれば、序盤から中盤における過程で、他のプレイヤーと比較することは難しくなります。
確かに盤面の点数を数えれば、現時点では負けているけれど、この戦術を選択したことは序盤の失敗だったかもしれないけれど・・・まだまだわかりません。彼と私は別の方式で勝利を目指しているのですから、楽観視すれば、私の戦術が大器晩成型だと思うこともできます。また、戦術のパターンが多ければ、「有効な戦術を試行錯誤の上に探す」という一歩手前の目的設定がプレイヤーによって生成される可能性もあり、中盤あたりで勝利に対しては脱落を感じても、戦術そのものの達成や、有用性(あるいは無用であること)の実証などで成功感を得られたりもします。次回以降の勝利に対する成功と見なすこともできなくはありません。

「序盤で失敗しても脱落しない」ではなく「序盤で失敗しても脱落しているという認識を感じさせない」。「勝利するという最終目的についていえば成功ともいえない程度の小さな成功」を「比較しにくくする」「別目標を設定させる」といった方法で成功感にかえていくというちょっと発想の観点を変えた実装方法といえるでしょう。こう書くとちょっと裏ワザのような、正しく実装していないようなイメージを持ってしまうかもしれませんが、この実装法の有効性は、多くのプレイヤーが経験していることでしょう。


2.未来を予想させない方法

N114_saikorotokabocya500前回から今回の流れをみて、勘の良い方はなんとなく想像できていたかもしれません(笑)。先が予想できてしまう点が、ローグライクと違うなら、できるだけ予想できなくさせてしまおうと方法ですが、やはりまったく予想不可能な事態を作り上げることはできません。基本的な方法としては

・ラウンドなどの区切りで、都度清算し、状況を引き継がない。
・乱数に頼る。


があるのではないでしょうか。前者は麻雀や数ディール行うトリックテイクなどを例に挙げるとわかりやすく、確かに1回目の失敗を2回目に最低限度しか引き継がない方式です。こうすることで区切りごとの成功の価値があがり、成功感を増すことができますし、過去の失敗の影響も小さくなります。・・・とは言うものの、これは今回ずっと例にしてきた拡大・成長していくタイプのゲームとは離れすぎていて、観点を大きく変えてしまっていますので、本件では当てはめたくありませんね。しかし、これに似たことを乱数、平たく言うと運によって演出することは可能でしょう。
割と有名なゲームの例として「王への請願」というダイスゲームを挙げてみます。拡大再生産かどうかは微妙なラインかもしれませんが(笑)、ダイスアクションを成功させることで、自分の特殊能力やダイスの数が増え、さらにそれをつかってより強い特殊能力などを得るべくダイスアクションに挑戦していくこのゲームでは、序盤の失敗の影響は大きいと言えるでしょう。再生産かどうかはおいておいても拡大・成長タイプのゲームです。
しかし、最後はダイスの目次第という乱数の影響で、最初の失敗が大きく脱落につながることはありません。ローグライクの事故死ほどではありませんが、理不尽な大打撃が他のプレイヤーを襲うかもしれませんし、(無理のない範囲で)確率の壁さえ越えられれば、飛躍的な追撃を行うことも可能です。さらに、ダイスアクションの確実な成功が約束されていない不安定な状況なので、「今、成功したという事実」の成功感・達成感が大きくなります。

「比重の重い特別視される成功」はここぞという場面での判定行為には常に伴うでしょう。「王への請願」では乱数を連続で絡ませることで、実際には特別視されない程度の成功を特別視させています。
乱数を多用しすぎたゲームは運ゲーなどと呼ばれ、あまりいい印象を与えませんが、そもそも、程よい運要素が絡むことはテーブルゲームの良さの1つとも評されていますし、冗長性を実装する上で十分考慮すべき、方法といえるでしょう。



といったところで、文字数がえらいことに!!!実装例前半は終了です。
次回、最終回にしようと思います。

【Next】 その4:実装例後半


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