【コラム】冗長性を考える(その4:実装例後半)

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「冗長性を考える」の第四弾。最終回は実装例の後半です。

【コラム】冗長性を考える。(その1:冗長性って何?)
【コラム】冗長性を考える。(その2:小さな成功)
【コラム】冗長性を考える。(その3:実装例前半)


3.プレイヤーに任せる方法

え、ゲームのルールの話をしているのにプレイヤーに投げちゃうの?そんな違和感を与える項目ですが、冗長性を実装する上で、最もポピュラーな方法はこれでしょう。いわゆるインタラクションとかいうやつです。
例えば「アグリコラ」を想像してください。最初配られた手札が悪かった、序盤でちょっとした失敗をした。それでもアグリコラを愛するプレイヤーなら知っているはずです。これは決定的な不利ではないということを。逆に手札が良かったら、これはそれなりに嬉しいでしょう。しかし、知っているはずです。それだけで勝利は約束されないことを。
特にワーカープレイスメントは、この方法を考えるうえで最もわかりやすい例となるでしょう。飛びぬけて有利なプレイヤーは他のプレイヤーにマークされ、実行したいアクションを他のプレイヤーに積極的に潰されてしまいます。ワーカープレイスメントの中には乱数要素が少なめになっているものが多くあります。「ストーンエイジ」などは思い切りダイスを振ったりするので、もちろんそうではないものもありますが(笑)。しかも、他のプレイヤーと共通のアクション枠で戦ったりするので、比較するなというのが無理な話だったりもします。しかし、それでも冗長性を持っている。いや、「プレイヤーの意識によって冗長性を実装させることが許されている」というのが、より正確な表現なのかもしれません。

もちろん、序盤の成功が有利なことには変わりありません、間違いなく成功でしょう。しかし、対戦ゲームは3人以上で遊ぶことが良くあります。1対1のアグリコラなら、最初の成功の差で勝敗が決まってしまうかもしれませんが、弱い者は弱い者同士、協力することができるのです。なんとも当たり前な話ですが、このプレイヤー間のインタラクションを強めることで、プレイヤーが序盤の失敗や成功を(極端な表現ですが)もみ消せるように設定する方法は、最も万能な実装方法だと考えています。
序盤の失敗・成功といっても様々なタイプがあります。手札の良し悪し、ダイス目のような乱数によるもの(=プレイヤーのスキルではどうにもならないもの)、初回プレイなどで発生しやすいプレイヤーの選択によるもの・・・さらにそれが意味する「勝敗の決定」という言葉の意味合いも、単純に得点が追いつけないという数字的なものや、1ラウンドやることでわかるプレイヤー間のスキル差などの数字化できないもの・・・様々かもしれません。
このプレイヤー委任方式の冗長性実装は、デザイン側での責任放棄を含みながらも、セッションごとの環境などデザインの手の届かないところまで配慮できるプレイヤーたちによって本実装させるという柔軟性を持ち合わせています。


4.今回のまとめ(総括)

PAK25_ipadtatakiwaru500今回は私はパッと思いついた冗長性の実装方法を紹介してきましたが、「なんで冗長性がないのか?」という具体的な問題点がはっきりすれば、実装手段はより多種多様に広がるでしょう。
「序盤の乱数によって生まれた差が脱落者を出してしまう危険性がある」という冗長性の欠如には、MTGのマリガン(初期手札が悪い場合、引き直すことができるルール)・ダイスゲームの振り直しのようにそれなりの対抗策があると言えます。一方、マリガンを許すということは、それを許さないルールよりも、引いてきた初期手札に対する成功感を減らすという副作用もあるでしょうが・・・(MTGの場合は、引き直すたびに手札が1枚少なくなるというリスクを負わすことで、適切な妥協点を設定しています。)
逆に「プレイヤースキルがゲームに反映され過ぎて、一手差が縮まらない」というような点を問題視するならば、ランダム性を含むルールを加えれば(あるいは既存のルールと取り換えれば)良いのです。

ここまで書いておいて、最後で台無しなことを書きます。
私の意見を述べるときにこれだけは押さえておきたい話です。

ゲームを創る際に、あるいは遊ぶ際に、目の前にあるルールについて無理に抽象的な表現を使い、あたかもテンプレート化された解決策や戦術があるように考えることは、非常に危険な行為だと思っています。例えば、「創っているこのゲームは冗長性がないから、冗長性を実装する方法を列挙してそこからルールを採用しよう!」という抽象的すぎる意識では枠を越えたアイデアや解決策はなかなか生まれません。

今回のコラムの実装例の内容は

・些細な失敗や事故で脱落者が発生しない。
・ゲーム中にたくさんの「小さな成功・達成」を味わうことができる。


こんなことは、どんなルールでもたらされるかをもう一度考えてみた。ということに過ぎません。(たまたまこれを冗長性という言葉で定義してみた。)
まず、余計に広域を見つめず、目の前の具体的な課題を探ること。これがゲームの戦術を考える際やゲームをデザインする際に、悪い意味での冗長性を持たないためのもっとも簡単な秘訣でしょう。

といったところで今回のコラムは終了です。長期戦を最後まで読み切ってくださった皆様に心より感謝申し上げます。次回のコラムはもう少しさくっと書きます(苦笑)


 


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