【ロストレガシーレジェンド創作ノートその0】引用型で行こう!

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この記事は、Board Game Design Advent Calendar 2014の5日目の記事を書くための筆ならしとして書かれました。



はじめに

皆様こんばんは。今年もまた忙しい師走がやって参りましたが、いかがお過ごしでしょうか。操られ人形館の常時次人です。
さて、時の経つのは早いもので、操られ人形館というサークル名で処女作となるゲームを世に放ったのが2006年、2014年秋のゲームマーケットで発表させて頂いた「とりっく&でざーと」で14作目となりました。

一方でこの14作にカウントしていないゲームの1作として、ワンドローさんがこの秋に発表された「ロストレガシーレジェンド 1(以下LLL)」にも参加させて頂いております。実はこういったコラボ企画への参加は初の試みでした。

この初の試みを記念して、私が創らせて頂いたセット『暗黒議会』について、いわゆるデザイナーズノートというやつを書いてみようと思います。
私の場合、このなんとかノートはどうにもマニアックすぎる内容になりがちなので今まで一度も公開したことはありませんでしたが、Advent Calendarのネタとしては許してもらえるのではないかと公開に踏み切る所存です。ちょっとしたプレミアム感をご堪能下さい(笑)

しかし、カレンダーの日付を見るとまだ12月3日。当番の5日まではまだ少し時間があります。だらだらと前置きをしましたが、今回は筆ならしということで、ちょっと関係がありそうな前談を書いていきましょう。

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【前談:引用型のルールデザイン】

ゲーム、特にシステムの作り方として『引用型』というものがあります。皆さんご存知でしょうか?
普通はご存じじゃないはずです。この言葉、私がこの記事を書くにあたって勝手に言い出した謎の用語 2です(笑)。ルールデザインという言葉も私は良くわからずに雰囲気で使っていますので、いろいろと先が思いやられますが、ひとまず続けます。

ゲームを創ろうとするとき、「テーマから創る、システムから創る。」なんて話がよく話題に挙がります。今回はシステムを創っていく場合の話となりますが、システムを創るにも何かきっかけが必要です。朝起きたら妖精さんが来てシステムの骨格が出来ていたので、後はテストをするだけだった!とはなかなかいかないでしょう。
一例として、このきっかけが『既に存在する他のゲーム』にあり、そのゲームの影響を受けているルールデザインを『引用型』 3と定義してみます。
もっと簡単に言うと先生となるゲームがあり、それを改造・改良して自分なりにまとめなおすような過程を経ているデザインのことと考えればいいでしょう。

例えば、今回の企画の旗揚げをしてくださった『I was game』さんの名作『ヴォーパルス』は、『世界の七不思議』から大成功した引用型ではないかと推測することができます。(私が見ているのは完成品だけですので、これは推測の域を超えません。真実は作者ご本人に聞く必要があるでしょう。) 世界の七不思議の多数に存在する要素を程良くそぎ落とし、わかりやすさを重視させる反面で、オリジナルの部分となる『経年カウンター』というシステムを搭載することで、冗長性 4を担保していったのではないかと想像を膨らませることができます。
特にミニマライズという言葉に称される、特定のゲームの煩雑な部分や時間がかかる部分にテコ入れしたゲームは、引用型の日本代表といっても過言ではないかもしれません。
髑髏と薔薇』から相場観が掴みにくいビットを排除して初心者でも安心して遊べるブラフゲームとした『赤ずきんは眠らない』。『スコットランドヤード』を短時間化し、怪盗側に新しい選択を提供した『ヴァンパイアレーダー』。挙げればキリがないでしょう 5
 さて、ミニマライズについての詳しい話は今回省略しますが、この引用型はどんな良いことがあるのでしょうか。すぐに思いつくものを2つほど書いてみます。

① 完成品を手に取るプレイヤーが、ルールを想像しやすい。

私が最初に思いつくのはこれです。プレイヤーが既に引用元のゲームを遊んだことがある場合、どんなゲームかが非常に想像しやすくなり、どこがどう面白いのかをある程度理解した上で遊ぶことができます。これは各セッションの安定した成果に大きく貢献するメリットです。プレイヤー全員がその引用元の存在を知らなくとも各セッションで一人でも知っていれば十分な効果が期待できます。

② デザインの迷走を防ぎやすい。

そして、どこが面白いかが分かりやすいのはプレイヤーだけではありません。スコットランドヤードに影響を受けてゲームデザインを始めた場合、大前提としてスコットランドヤードを面白いと思ったからこそ、引用元にするのではないでしょうか。
故に「自分が作りたい面白いゲームとは何なのか?」と聞かれた際に、スコットランドヤードのイメージと目指すゴール地点との差分から、明確なコンセプトを提示することができるでしょう。明確なコンセプトを持つことはいろいろな意見が入ってくるテストプレイをはじめ、長い製作期間の中でデザイナー本人が迷走しないために、とても大切なことです。具体的な指標がイメージできることで(少なくとも指標が何もないよりは)順調な航海が約束されます。数値的なバランス調整を行う際にも、比較できる指標があることで舵取りは随分楽になると予想されます。

ゲームの話ではありませんが、「デザインを始めるときは、まず模倣から始める。」と聞いたことがあります。引用型を模倣とまで言ってしまうのはあまりにも乱暴ですが、ゲームデザインを始める前に沢山のゲームを遊び、先生となるゲームを定めることは、比較的優しいゲームデザイン方法 6として『最初のデザイン』を頓挫させないために有効な手段かもしれません。
ちなみに先生となるゲームは何も1つでなくても構いません。複数のゲームを合成して考える変則的な引用型のことを「キメラ型」と言ったりするようです。遺伝子が2種類以上 7あるということでしょう。


【新規型のルールデザイン】

さて、引用型という造語の話が終わったところで、当然出てくるのは引用元がないケースです。これを仮に『新規型』と呼ぶことにしますが、程度に違いはあるものの、我々が創るゲームのほぼ全ては、自分が見てきた過去のゲームに影響され、言うならばそれを師(反面教師もいるでしょうが)としています。既にたくさんのゲームがある現在において純正の新規型は絶滅危惧種と想定されます。ある日突然アイデアが降ってきた!なんて話を聞かないわけではありませんが、きっとあれは嘘 8です(断言)

操られ人形館のゲームには、新しい感動の種がなければならない。そう謳い、できるだけ斬新なルールを創りたいと試行錯誤を続ける私ですが、本当に何もないところからルール基盤が生まれることは99%ありません。
例えば、準新作の『ペクーニア』は『コロレット』の引用型です。実際にペクーニアをプレイされた方からは、「あれのどこがコロレットだ!(怒)」と応援のお言葉を頂戴することがありますが、「コロレットの最初の手番は何も考えずに捲るだけ 9」という部分に何故か着目してしまったことからデザインが開始されたペクーニアは、紛れもなくコロレットの引用型です。わかりやすいタイプの引用型との差は、先生からどれだけルールを貰ったのか、あるいは踏みにじったか、という程度の問題と考えれば良いでしょう。

また特定のジャンルのゲーム・・・例えばドラフトゲームを創ろう!と考えてオリジナルのルールを創るときも、その背景にはそのデザイナーがプレイした数多のドラフトゲームが存在します。数十匹を合成したキメラ型と言えるかもしれません。
「某ゲームはドミクローンかデッキ構築というジャンルか?」なんて水かけ論があった気がしますが、このあたりは引用元からのコピペ量に対し、悪いイメージ 10を持つか否かという程度問題の話に突入してきます。実も蓋もないことを言ってしまうと、新しいルールかよくあるルールかという区分けは程度問題でしかないのです。

絶滅危惧種の話も機会があれば書きたいところですが、今回は「ほぼ全てのルールデザインは程度に差はあれ引用型である」という極論に騙されてください。
騙されてくれた方だけに引用型の(デザイナーはきっと無意識みんなやっている!)基本的な3ステップをこっそりお教えします。全てが引用型である以上、応用次第でどんなゲームデザインの基盤にもなりうるでしょう。

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【引用型の3ステップ】

全ての道は引用型から続く。そんな極論をどこかの誰かが書いていた気がしますが、ここでは素直に先生となるゲームが1つある場合のステップを紹介しましょう。

(1)引用元ゲームの分析。(ルールの意義や意図を探る。)

非常に当たり前のことですが、これは非常に大切です。今回は引用元1つに対する分析をしようというステップになりますが、普段からいろんなゲームを分析していれば、分析結果が自然と蓄積され、キメラ型でも悪魔合体型でもフレッシュゴーレム型でも応用できるようになります。

例えば、突然こんなことを考えてみます。『ドミニオン』の初期デッキは10枚ですが、さて、これは何故でしょう。二手番で山札を一周させるためでしょうか。7枚入っている銅貨が2枚・5枚に、あるいは3枚・4枚に分かれることがカードコストとの兼ね合いで大切になるからでしょうか。そもそも初期デッキに入っている3点(初期が銅貨7枚)にはどんな意味があるのでしょうか。手札は何で5枚なのでしょうか。エトセトラ、エトセトラ。

畳み掛けるように疑問文を綴ってみましたが、こんな小さなことですら分析をしてみると面白いものです。それぞれの分析はドミニオンのエッセンスを抽出し、時には(特定環境下での)改良可能点を炙り出す効果が期待できるからです。しかし、正直なところ、これらの質問に正解はありません。どうしても正解が知りたい場合は、やはり作者のヴァッカリーノ氏に聞くしかないでしょうが、聞く意味はほとんどないと考えています。
むしろ、正解と異なる解を持つことでドミニオンを独自の変則的な切り口から見ることができたと、前向きに考えるのが良いでしょう。大切なのは自分なりの切り口と解を持つことで、こうして分析された引用元は、仮に今回のシステムデザインが失敗に終わったとしても、後々役に立つ可能性が高いです。

(2)変更点の決定。

はい。呆れてしまうぐらい普通の流れですね。切り分けが終わったら、「このゲームのここがもっとこうだったらいいのに! 11」みたいな雰囲気になりませんか?
そうなったら儲けもの。早速テコ入れです。但し、程度問題のお話だけは少し気にしておきましょう。

≪『ドミニオン』についていろいろ考えた結果、よりアクションカードを活発に使ってもらうために、銀貨を4コストにすることにしました。あとは何も問題がないのでそのままにします。≫

これが悪いとは言いませんが、この程度の変更だと誰の目に見てもバリエントルールの枠を超えません。逆にドミニオンについてこれ以外に弄り様がないと思うのであれば、最高に面白いドミニオンをどんどん遊んで、デザインのことなど一旦忘れるのがおすすめです。

少なくとも自分にとって十分に価値のある変更点がない場合は、仮にそのままデザインを進めても、完成品は偉大なる師の足元にも及ばない可哀想な子になる可能性が大きいと思われますので、無理は禁物です。もし、デザイナーに必要な素質 12などというものがあるとすれば、その1つに「デザインをしない勇気」が挙げられることは間違いないでしょう。

(3)歪みの補正とバグつぶし。

そして調整ですね。最後には必ずこれをしましょう。引用元が色濃く出る引用型の場合、ここが一番大切で、しかも差が出てくる部分です。

≪『アグリコラ』は長すぎるのでラウンド数を70%削減して30分以下で終わるようにしました。これで誰でも気軽に楽しめるに違いありません。≫

思い切った変更ですが、別に間違ったことはなさそうですね。但し、多くの人が気付くように、ただラウンド数を70%削っただけでは、同時にアグリコラの魅力も存分にそぎ落としてしまい 13、無駄に要素の多い残念ゲームになりそうです。そこで『その1』に戻ってアグリコラの魅力を自分なりに引っ張り出してきたりします。そしてそれを30%ラウンドで実現するためにどんなシステムを実装し、変更していくかを考える必要が出てきます。さらに多くのラウンドがなければ無駄になってしまう要素も削るなり変更するなりしなければいけません。さらっと書いていますが、今回の流れで生みの苦しみがあるとすればこのあたりが本命で、発明的な閃きを問われることもあります(笑)。

さらにここには1つ罠があって、それは引用元が高確率で自分にとっての面白いゲームであることです。引用元が面白いのですから、多少歪みやバグが残っても、テストしてみたら結構いけてしまった(と感じた)りするもの。面白いゲームができたと手放しに喜ばずに、丁寧に仕上げていきましょう。


おわりに

ということで、非常にためになる3ステップを書いてみましたが・・・
え?いまいちピンと来ない?やっぱりそうですか。私もそれを心配していたところでした。
やっぱりこの手のふわふわした話には、実践的な具体例がないとツライですね・・・あれ、そういえば、私もシリーズものという超色濃い引用型のルールデザインをする機会があったことを思い出しました!そう、LLLの『暗黒議会』です!
ジャストな例がなんとも身近にあったものです。なんと奇遇な!この幸運を活かさない手はありませんね。

・・・とっても自然な流れで、やはり、次回からLLL『暗黒議会』の創作ノートを書かなければならなくなりました。人は運命には逆らえませんから。
次回、【LLL創作ノートその1】分析!ロストレガシー!は12月5日になんとか書き上げる予定ですので、もう少々お待ちください。
前段はここまで。長文をお読みいただきありがとうございました。(まだまだ長文が続きます。)


関連記事のアップ予定表

【LLL創作ノートその1】分析!ロストレガシー!
 12月5日のBoard Game Design Advent Calendar 2014ネタになる予定。 なりました。

【LLL創作ノートその2】遺産が3つになりまして。
 年内アップ予定。6日~7日ぐらいに出せるように頑張ります。 ギリギリ5日の内に書きあがりました。

【LLL創作ノートその3】16人の役割分担。
 これは書くかどうかわかりません。気長にお待ちください。 何とか完成しました。

Notes:

  1. ロストレガシーが8セットも入った豪華版。それぞれのセットは異なるデザイナーが創っており、それぞれ特徴的なルールが盛り込まれている。合言葉は「混ぜるな、危険。」で、混ぜると有毒ガスが発生し、最悪の場合(そのセッションが)、死に至る。
  2. ゲームデザイナーを含め、何かについて必要以上に考え込む人たちの中には勝手に言葉を作り出す人が少なからず存在します。深く考えず、ひとまずニュアンスで捉えましょう。
  3. 引用という言葉は『パクリ』のようなイメージがあり、嫌いな方もいるかもしれません。そのあたりの日本語は『参照型』とでも『採用型』とでも適当に置き換えてご覧下さい。
  4. 詳しくはこちらの記事を合わせてどうぞ
  5. これは言うまでもなく全て私の妄想です。詳しくは制作者ご本人にお問い合わせ・・・すると迷惑かもしれないので、気にしすぎないのが大人の対応でしょう。
  6. 優しい方法であり、考え方次第では効果的な方法でもあります。ゼロから何かを想像する難しい方法が常に上位にはならないことを補足しておきます。
  7. ニュアンスでわかりますよね。大切なのは想像力です。
  8. 嘘は言い過ぎかもしれませんが、どんなに見たことのないシステムを創ったつもりでも、潜在的に影響を与えているゲームたちが存在するはずです。
  9. コロレットの最初の手番プレイヤーは誰がやっても同じ結果にしかならず、スタートプレイヤーになっても嬉しくも悲しくもありません。
  10. 多くの人からパクリゲー・盗作と思われてしまうと流石にアウトっぽいですが、そのラインがどの程度なのか、明確に定義されることは当分なさそうです。
  11. 遊星ゲームズさんが頒布されているテーブルゲームデザインの本に寄稿させて頂いた記事中で、特定のルールに対する疑問や否定から、オリジナルのシステムデザインを始める流れを「否定的デザイン」と名付けています。これは引用型の一例ですが、割と高打率で発生する流れではないでしょうか。
  12. そんなものはありません。アナログゲームは熱意さえあれば誰にでも創れます。他分野の創作に比べ圧倒的に特殊なスキルが必要にならないものだと考えています。
  13. ゲームデザインをする上でトレードオフの概念は切っても切り離せないもの。わかりやすさを求めて要素を減らせば、戦略性を犠牲にしたりします。逆も然り・・・ありがちな話です。絶対に減らすべき無駄な要素があれば削るべきですが、引用元が名作である場合、そんな要素は基本的にはないと考えるほうが無難でしょう。

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