【ロストレガシーレジェンド創作ノートその2】遺産が3つありまして。

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この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2014の5日目の記事から一人孤独に続ける創作ノートマラソンの一部です。
当記事は『ロストレガシーレジェンド(以下LLL)』のセットである『暗黒議会』の創作を思い出しながら書かれたノートで、オチやまとめがありません。またロストレガシーのルールを知っている必要もあります。
また、『暗黒議会』のルール(PDFファイルにつき注意)をあらかじめお読み頂くと、内容が把握しやすくなります。

これまでの記事は以下の通りです。

 【ロストレガシーレジェンド創作ノートその0】引用型で行こう!
 【ロストレガシーレジェンド創作ノートその1】分析!ロストレガシー!




はじめに

その0』『その1』と、ここまでお付き合いいただいた方は既に注釈を含め15000文字程度の文章を読み上げていることになります。駄文をお読みいただいていることへの感謝を込めて。引き続き、書き手は操られ人形館の常時次人です。


さて、早速前回の続きですが、

  【ステップ1】:引用元ゲームの分析。(ルールの意義や意図を探る。)
  【ステップ2】:変更点の決定。
  【ステップ3】:歪みの補正とバグつぶし。


前回の【ステップ1】に続き、今回はこの【ステップ2】【ステップ3】の半分ぐらいまで行く予定となっています。

【ステップ2】:変更点の決定。

前回の分析結果から、ほぼ完璧なゲームである『ロストレガシー』でも、弄ろうと思えば弄れそうな場所 1がありそうです。
ピックアップした項目は多々ありましたが、話をしやすくするために代表例を1つだけ紹介します。

  『勝利条件』を分析する。
    ⇒「探索」により多様性・戦略性を得ている点


分析で最初の項目に挙げたように、私がラブレターよりもLLの方が良いと感じる時、その根源は間違いなくこの項目 2にありました。この項目を助長していく変更は、新セットとして十分意義のあるものではないでしょうか。
LLはラブレターの簡単さを捨て過ぎることなく、戦略性の増加を成し得ています。このバランス感覚は素晴らしいものですが、敢えてさらにLL方向にシフトした「もっと思考するLLセット」があったとしたら、私は是非やってみたいと思いました。
LLのキーポイントは遺産のありかの推理。では、もっともっと遺産を推理させるLLは如何でしょうか。

これが今回の変更のメイン 3で、「変更点の決定」を端的に書くなら、ここまでで終了となります。 4


もっとLLらしいLLを!

「お前は何を言っている?」と責められそうな見出しですが、こうして今回のコンセプトが決まりました。思考&推理、そして判断の反映。悩ましいLLセット!です!
私の勝手な分析によるとLLはより戦略的になるほどLLの意志に従っていくはずなので、この方向性に間違いはありません! 5

しかし、もっと推理できるようにすると言っても、これ以上何を盛り込む 6というのでしょうか。目の前にあるのは完成品。シェフの気まぐれサラダが食材だと言われてどうしたらいいのか戸惑う料理の鉄人のような顔になります。

そこで逆を考えてみることにします。プレイヤーが遺産推理の手を緩め得るのはどんなときでしょうか。探索のみにフォーカスして考えるのであれば、それは遺産である「5」のありかを知った後ではないでしょうか。
偶然「5」のありかを知った時、推理小説でいえば犯人の名前が目の前にあるような感覚を覚えます。もう「5」がどこにあるのか考えなくても良いのです。
これは同時に「5」を知る者と知らぬ者の間に大きな格差を生みます。推理という断片において「5」 7に委ねられた重要性は大きく、偶然手にするかもしれない1枚が推理の重要性を掌握していることに気が付きます。

それでは、ここにメスを入れてみることにしましょう。1枚のカードを見つけるという目的に主を置いたゲームから、どこまで盤上が見え、推理脳を働かせたかを競うようなゲームに変更させる決定です。
方法はいたって簡単で、「5」の持つ重要性を他のカードに分散させることです。これにより1枚を手にすることで推理が終わる可能性は低くなり、逆に一部づつであれば推理の鍵をプレイヤー全員が得られる可能性が高くなります。

  失われた遺産が分離して「3つの遺産」がやってきたのです。

ここで3つにしたのは「7」「8」「×」といった3枚カードとリンクさせるため 8ですが、ここまでの流れがすべて同じでも「16個の遺産」になるケースがあるかもしれません。引用型で同じ着眼点でもできるゲームが異なるのがデザインの面白いところ・・・『失われた遺産が多すぎる』 9とか、夢が広がりますね。


【余談】

積み上げた推理が必要な『暗黒議会』は、結果としてなかなかのゲーマー向けセットに仕上がったのではないかと自負しています。一方でLLがラブレターから継承した「手軽さ」という最大のメリットを少なからず犠牲にしているセットにもなりました。
これはLLの続編セットがここまで続き、元祖LLが定着したからこそ、許されるトレードオフかもしれません。偉大なる恩恵を受けてやり過ぎなデザインを続けることができました。改めてお礼とお詫び申し上げます。

タイトル名が決まる前のやり取りでワンドローさんからは『操られガシー』と呼ばれていた『暗黒議会』。私自身はこのやりすぎ感から『台無しレガシー』 10と呼んでいました。


『正解の遺産』の登場

このあたりから【ステップ2】【ステップ3】の境目が曖昧になってきます。
核となる変更点を決めたという意味ではここから先は、どちらかというと【ステップ3】の領分と言えるかもしれません。

【ステップ3】:歪みの補正とバグつぶし。

はい。「7」のカード3枚が遺産になりました。この時点では「8」「×」が遺産にする案もありました。何故「7」が選ばれたのかという話については、いずれどこかで・・・。

こうして「5」の持つ重要性を三分割させることで台無しレガシーの骨格ができたわけですが、3枚あってどれも正解!ではだいたい最後まで若番(特に「1」)を持っていた人が勝つだけのゆるゆるレガシーになってしまいますし、そもそも重要性が複製されただけで分割できていません。
ここは月並ではありますが、2つははずれで1つが正解という流れが順当でしょう。

  正解の遺産はどうやって決めていきましょう。

上記の流れから、まさかサイコロを振って・・・とか、何かしら一切プレイヤーの推理や判断が介入しない純ランダム要素のみによって正解を決定するという選択肢はありません。台無しコンセプト 11にあまりにも反する一大事です。
となるとこれはもう『遺産の両隣にあるカードの数値合計を比較して正解を決定する』に行きつくしかありません。仮決定です。

飛躍しすぎと突っ込みが入りそうなところですが、LLのカードの持つ要素は基本的には『数字』と『効果』しかありません。
このうち、不要な混乱を招かずに判定に使えそうなものはやはり数字です。さらに台無しコンセプトに立ち返れば、この正解の決定権を1つの要素だけに委ねることはできません。例えば、とある状況下のカード1枚(山札の残り1枚・遺跡のカード1枚など)の数字のみを参照すると結局「5」の代わりにそれを偶然知れば推理完了となり、当初の問題に逆戻りしてしまう危険性があります。
また別角度からの事情ですが、16枚という制限 12がかかっている状況で判定のためだけに枚数を割いてしまうと、4人プレイ時の山札不足 13が加速してしまう懸念もあります。

そんなこんなの消去法を繰り返して、「両脇足し算」という方法が一案として登場するのは時間の問題でした。
今回は省略しますが、この仮決定に伴い、『遺跡』の存在も消えることとなり、代わりに捨て札に裏向きにプレイされるカードたちが必要と判断されます。ここまでの流れを御理解頂いた方は遺跡が消えた理由をなんとなく予想してみて下さい。

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  しかし、「3つの遺産」&「遺産の両隣足し算」だけではもう一息足りません。

通常、遺産は隠さなければいけない(公開されていてはいけない)のですが、これにそのまま従って「7」はプレイできない!とか言い出した日には、見える悲劇はあまりにも明白 14過ぎて、テストプレイをするまでもなく5秒でダメそうなことが分かります。
せっかく両脇のカードまで知るか推理する必要性をルール化しているのですから、「7」だって気にせず表でプレイさせる手もありますが・・・

推理させるには、推理対象となるべき意義ある非公開情報が必要です。特にこのセットでは「程よくランダムな非公開情報」と「単純な消去法だけで正解にたどり着かないこと」が必須条件となり、カード効果だけでフォローし切ることは難しいと判断されました。

そこで「遺産の決定権を他のカードの両隣の和に委ねる案」が挿し込まれることとなりました。これが各党議員「2」「3」「4」 15の存在です。
プレイアビリティだけを考えれば素直に「7」の両隣足し算が望ましいのですが、そこを少し犠牲にして、キーカードを3枚から6枚に増やします。
各党議員の両脇のカードも含め、盤上に展開されるほぼ全てのカードに意味を持たせることができるという目論見があり、これによりどのカードが非公開になろうとも、それを知ること・推理することの意義が少なからずあるゲームになりました。私の悪意が成就しつつある瞬間と言えるでしょう。
必ず左隣から捨て札を構築すること、プレイヤーの捨て札の両脇を繋げて全ての捨て札を円形にすること、残ったプレイヤーの手札でも正解判定ができるようにすることなどの補足 16が加わって、『暗黒議会』のレシピがだいたい完成です!


カード効果でフォローすべき3つの条件

これで大枠は完成したかに見えますが、言うまでもなくまだ大枠だけです。
私の野望を達成するためには16枚(9種)のカードに効果を割り振ってあげなければなりません。この効果たちはレシピが完成するに際し、以下の3つを実装する役割を負っています。


(A)一定以上の非公開情報を作ること。

非公開情報を作る必要があると言いながら、どうするかは棚上げ。そんな酷い状態でしたが、LLには強い味方がいます。それがカード効果という9種類もある変更可能なルールたちです。


(B)プレイヤー間で情報格差を作ること。

このゲームにはコマやカードで表示されない重要なリソースがあります。他のゲームでいえばお金や得点にあたり、勝利のために集めるべきもの。それが「情報」です。
そこにある1枚の裏向きのカード。このカードの正体を全員が知っているのであれば、勝利に向かう上でその情報の価値はほぼなくなります。
LLの「遺跡のカードを見る」に代表されるような基本的な情報収集効果(そしてそれに伴う情報格差)は『暗黒議会』という情報戦を円滑に進めるために省くことのできないものとなります。


(C)ゲームバランスの調整役を担うこと。

今回はあまりのマニアックさ 17のために削除されてしまいましたが、『その1』では他にもまだまだ注目できる項目がありました。そんな項目に対する答えをカード効果に乗せていきたいところですし、いくら推理に重点が置かれているとはいえ、時には『意外性』『アクシデント』を提供 18してみても面白いかもしれません。
コンセプトは大切ですが、それだけで遊べるものになるという約束はどこにもありません。


おわりに

さて、16枚のカードたちはこれらの役割のために次々と設定されていくことなりますが、それは機会があれば次回に書かせて頂くこととして・・・
LLL『暗黒議会』というゲームのシステムはこのように組まれていきました。

ただただ長い鬼のような文章 19でしたが、なんとなく引用型のイメージ、湧きましたでしょうか。これは一例ですが、こんな感じで他のゲームを掘り下げていくことで、意外とゲームは創れたりするものです。
本件はLLシリーズのセットを創るということで、大枠を超えない変更でしたが、通常のデザインではどこをどれだけ変えても自由ですから、引用型の可能性は無限大ともいえるでしょう。

またシステムの話しかしていませんが、変更・調整には『テーマ』や『アート』も深く関連してきます。これを「やることがいっぱいあるよ」という『コスト』ではなく、「それだけ多くの自由な切り口から展開することができる」という『選択肢』と捉えれば、さらにゲーム創りの世界は広がっていきます。


さて、創作ゲーム論が始まると、どうしても「実際に経た具体的な道筋」が公開されにくい傾向にあるのではないかと思い立ち、こんな無謀な記事を書き始めたわけですが、少しはお楽しみいただけたでしょうか。
この創作ノートはもう1記事続くのかどうか・・・ともあれ、今回はここまでです。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。


関連記事のアップ予定表

【LLL創作ノートその3】16人の役割分担。
 これは書くかどうかわかりませんが、一応年内に書いてみようかなと思っています。 何とか完成しました。


Notes:

  1. 何度も書くように、デザインの基本は『トレードオフ』です。LLが完成されたゲームである以上、テコ入れが必須という局面は存在しないでしょう。後は私がどう思ったかというだけの話です。
  2. 調教された常時次人は、ゲーム中に自分の思考や判断が問われるほど喜ぶ傾向にあるようです。
  3. 『操られ人形館』的なセットを!という意識が含まれています。
  4. 前回の分析結果の各項目に対し、どのような考えをもっていたかを書き出してみましたが、あまりにも内容がマニアックだったため削除されました。
  5. 過ぎたるは及ばざるが如し。ごめんなさい、ごめんなさい。
  6. 不用意な追加はシリーズセットとしては唯の蛇足感だけを残すことになるでしょう。
  7. ロストレガシーのテーマ上、当然の結果です。何も悪いことではありません。
  8. 「6」とはリンクしにくい!2つの遺産では消去法の活用により1つの遺産と大差がない結果を生んでしまう危険性があります。
  9. 大気圏内ゲームズさんの『シンデレラが多すぎる』を参照のこと。
  10. ふなっしーっぽく読みましょう!
  11. 『暗黒議会』のコンセプトのこと。
  12. この注釈は検閲者によって削除されました。(2回目)
  13. 前回の『その1』で話題にしましたが、今回の記事ではマニアック過ぎるので詳細は割愛しました。
  14. 探索フェイズで3人が「7」を持っていたため、全員探索する権利を失いました!とか。
  15. 何故、「8」や「×」ではないのでしょうか? そこまで詳細に語るには、紙面は狭すぎます。
  16. 処理できないケースを潰すため、プレイヤーのほぼ全ての行動に因果が発生するようにするための細かい補足です。
  17. 手札・山札・効果と数字の関係。それぞれの項目ごとに記事ができそうでした・・・反省。
  18. 『意外性』『アクシデント』を許容できるのも、一回あたりのプレイ時間が短いLLの魅力。可能ならばこの魅力は活かしたいところです。
  19. 実際のところ、特殊効果の微調整以外は『暗黒議会』に着手して数日で終了しています。文章に書き起こす方が圧倒的に大変でした。(涙)

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